調教軍団
私の家には、生後約18年のネコがいる。人間の年で言ったら幾つになるのだろう・・・。とにかく老ネコには間違いない。
ルル(そのネコの名前)は雌ネコで、若いときは非常に機敏でかなりの悪戯好きだった。よそ様のネコとケンカしているのを何回か目撃したけれど、それはもう凄かった。とても「家で飼っているルル」と思えないほど、攻撃的で野良猫のボスのような態度だった。ルルを飼っている三上家のメンバーとしては「世界で一番かわいいネコ」なのだが、端から見たらとんでもなかったかもしれない。
しかし、いくらかわいいルルでも、家ではフリーパスで出入りは許されない。必ず足の裏を雑巾で拭き、身体も拭き、そうしないとルルは家に入ることはできない。従って、ルルが家の中に入らないと、家族も寝ることはできないのだ。今でこそ、外に出るのも億劫なルルだけど、若い頃は違った。家族の夕食が済む頃を狙っているのか、ちょうど夜の8:00頃にバタバタして外に出たがる。そうなると、もう何時まででも帰ってこないのだ。特に、沈丁花の咲く時期には大変だった。ルルはきっとモテモテだったに違いない。数々の浮き名を流したのだろう(?)。
そして、夜中の3:00頃、ちょうど人間が夢を見ている頃に悲しそうな声で鳴き始めるのだ。それは「ちょっと〜、家の中に入れてよ〜〜」という、懇願の鳴き声なのである。
そんなルルも、もう家の中の専用ソファで眠っていることだけが大好きになった。トイレを心配してルルを外に出しても、ほとんど歩みを進める気配もない。そういうルルを見るとなんとなく寂しい気もしてくる。
話は変わって、近所の学校の横道で週に1度の割合で、ある集いが催されている。それはハスキー犬と飼い主たちの集いである。ハスキー犬は、南極物語で寒〜い雪の中を一生懸命そりを引いていた働き者で賢い犬である。顔もきりりとして体つきががっしりしていて、いかにも勇敢で頑強な風情がある。
その集いを何回か見ているうちに、飼い主のボスがいることがわかった。そういうのを「トップブリーダー」とでも呼ぶのだろうか。とにかくそのボスが、他の飼い主たちに懇切丁寧に指導をしているのである。飼い方の指導というよりも、愛犬を芸犬にさせる指導なのだろうか。それというのも、プラスチックでできた子どもが庭で遊ぶような滑り台をその場に置き、その上を愛犬に歩かせているからである。そして愛犬が滑り降りた瞬間に、飼い主は愛犬にあつーい抱擁をするのであった。その抱擁の仕方も半端ではない。飼い主たちのボスは、「もっと愛情を込めて抱いてあげてください!」と自ら手本を示す。飼い主たちは、そのボスの一声でもっと悦に入った表情になっているのだが、ハスキー犬たちは相変わらずきりりとした冷静な顔をしていた。
ルルは何も芸はできないけれど、そんなネコを飼っていることにちょっとした安心感を感じてその場を行き過ぎた私だった。
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