マダムの快感
だんだん陽差しがふんわりとしてきて、今朝はコートなしでジャケットで大丈夫なくらいあったか。こういう季節はホントに気持ちがいい。私は春生まれのせいか、春夏がだ〜い好きなので、こうして花のつぼみがパカン!と割れはじめる季節はうきうきになる。そしてこんな季節だからなのだろう、エステティックのチケットが当たった。しかも5万円分!という、すご〜い値段であった。ものすごく有名な会社なのだけど、何しろ私は「エステ」なんていうものを一度も経験したことがなかったので、当たったのに(どうしよう・・・)とチケットを手にしたもののドギマギしていた。
チケットが着いてから1週間後、そのエステ会社から電話がかかってきた。その会社の女性は「チケットは本当にご当選されたものです。その後一切勧誘はしませんのでご安心してお使いください」というとても丁寧な説明をしてくれたので、当選チケットを使う日を予約してしまった。
そしてそれが昨日!であった。前述のとおり、エステ初体験の私はまずそのサロンに入ること自体にびびっていた。サロンはよく見かけるけれど、とっても「高級感」があってかなり入りづらいところだ。お寿司屋さん(くるくる回るじゃないお寿司屋さん)にひとりで入るような気分。何と言っても未知との遭遇。しかし、私は「チケットが当たった幸運な人」なんだぞ〜と瞬発力をつけて足を進めた。
受付には「エステのお姉さん」という想像どおりの、優しげなふわんとしたお化粧をしたお肌のきれいな人が立っていた。その雰囲気どおりに優しく迎えてくれてホッとしていると、部屋に通された。
まず体調チェックということで、簡単なアンケートに答える。まるで病院にかかるような感じのアンケートだった。それから「パッチテスト」というアレルギーテストを腕にする。ハーブの香りのするクリームやジェルを何種類もつけてガーゼを乗せられた。コースは3種類ある。「ボディ」「フェイス」「脱毛」のうち、私は「フェイスコース」を選択した。
パッチテストの間、今までのお姉さんとはちょっと質の違うスーツのお姉さんが入ってきて「エステ」について説明してくれた。とても早口で動作が大げさなので、説明がはやく終わってほしいなぁと思いながらあんまり真剣に話を聞かなかった。でもとにかく、当社のエステは素晴らしい〜〜!という説明だったと思う。
そしていよいよ私はロッカールームでガウンに着替え、フェイスエステのコーナーのイスに案内された。真っ白なイスはとっても座り心地が良くてそのイスを倒された私はそれだけで眠くなってきた。おまけに足にはマッサージをするプロテクターみたいなものをつけられて、それが微妙に足を波打つのであった。快感・・・。
「お顔の毛穴を開くためスチームをあてますね」とエステティシャンの人に囁かれ、顔にスチームを当てられた私は、まるで手術の麻酔をされたようにさらに眠くなってきた。それからとってもいい香りのするクリームをつけられて洗顔がはじまった。とにかくエステティシャンの人の手は「魔法の手」みたいで、ほどよい強さで顔の上を螺旋状に動いている3と4の両指がこんなに気持ちがいいなんて感動ものだった。
そして熱めのタオルで顔を優しく包まれて、まるで私の顔は「貴重品」のように扱われた。そんなふうにとっても気持ちが良いくせに私は(こんな風に扱われたら誰でも図に乗っちゃうんだろうなぁ・・・)と、どこか冷めていた。
それから毛穴のお掃除をする。機械を当ててするのだけれど、もちろん気持ちがいい。「毛穴の汚れはないですね」と言われて「そうですか」と虚ろに返事をしたけど、でもどうせならあってくれたほうがより一層気持ちが良かったかもしれないのにと思った。
そのあとはマッサージタイム。さきほどの洗顔と同様になんだか脳みそがとろけそう〜。顔のマッサージってこんなに気持ちが良かったの?って驚いてしまった。その合間に登場する熱いタオルがこれまた気持ちが良くてまさに極楽なのであった。
最後にグリーンっぽい香りのクリームを塗られてフェイスコースは1時間で終了だった。名残惜しくてエステティシャンのお姉さんのマジックハンドを持って帰りたい気分になった。
このコースは25000円分ということだった。高い・・・・・・。なぜか残りの25000円分を私は使うのをやめることにした。『クセになってしまう』のがイヤだった。「マダム」になってしまうようなエステ体験は私には当分、いや、ずっと似合わないかもと感じたのである。
|