1999.10.7

カメラと南部鉄瓶

 兼ねてからほしかった一眼レフカメラを買った。一眼レフカメラというと、ものすごく高価で大きさもかなり大きいというイメージがあった。しかし、今やそんなことはない。私の買ったのはオリンパスのカメラなのだが、軽くて、割にコンパクトで、しかも思っていたよりもほんの少しだが安価だった。APSフィルムを使い、カートリッジも途中交換できるもの。ここで自慢しちゃうけど、ホントに嬉しい。
 今まで私が使っていたカメラはCONTAX・T2。とても気に入っていて長年愛用している。顕微鏡レンズを使っているところがいい。見かけも格好いい(と私は思っている)。街並みを撮ると、ハッとするような写真が結構な確立でできあがるし、特別な技術なんてなにのに空気や音を感じるような写真になるときがあるのだ。そんなに気に入ってるのに新しいカメラを買ったのは、一眼レフっていうものをどうしても使ってみたかったら。これからはCONTAXと、一眼レフを使い分けようと思う。(どうやって使い分けるのかよくわかんないけど)
 急にカメラ小僧になったような気分。買ってから、すご〜く嬉しくて、新しいカメラの説明書と一緒に何日間か添い寝していた。(いつの間にか眠ってしまったというのが正しい)
 青い空が広がる秋の一日には仕事をさぼって、被写体を求めてついフラフラ〜っと逃亡したくなってしまう。
 それでも、一枚目の被写体はかなり吟味しようと思った。そういうどうでもいいところに、どうしようもないこだわりのある私。そうなると、フィルムを入れてしまった以上、シャッターを切って遊んでみることができなくなった。あ〜〜、とにかくはやく何かを撮ってみなきゃと気が焦った。
 この間の日曜の夜、ほんの少し部屋の模様替えをした。そしてテーブルクロスも秋らしくしてみたら、テーブルにのせた南部鉄瓶の急須が存在を主張した。赤茶色で桜の花がちりばめられている可愛らしい南部鉄瓶は、私の一番のお気に入りの急須である。なにかこの急須に「私を撮ってくださいませぇ」と小声で囁かれているようなそんな不思議な気分になった。もう夜中なのに、一時間ばかり鉄瓶さんをどう撮ったらいいだろうと、いろいろ試案していた。こっちの角度がいいかな・・とか、後ろには緑を置いてみたらいいかな・・とか。でもシャッターは切れなかった。なんだか考えすぎてわかんなくなってとても疲れた。私も疲れたが、あちこちに移動させられた鉄瓶さんもお疲れのように見えた。あれこれ悩んだけれど、日光の光を少し入れなければこの被写体の良さを引き出せないと思ったので、寝ることにした。
 次の日の朝、気持ちよい秋晴れになった。光がまだ少しだけ差し込むテーブルで、昨晩試案した構図とは全く違う構図で鉄瓶さんを撮らせていただいた。
 写真ができたら公開いたします!これからはこのページに少しずつ写真を掲載しますのでどうぞ見てやってください。

1999.10.12

ネコになる

 金木犀の香りがそこはかとなく香ってくる季節になった。金木犀や、春先の沈丁花は、なぜかこう色っぽい気持ちにさせる。ふ〜っと香るこのいい匂いは、私の頭の中を余計に空っぽにさせる何かがある。
 さて、この連休、私はちょっとついてなかった。予定していたことが3つとも出来なかったのである。2つは出かけること、1つは美容院に行くこと。本来の目的とは全く違うように過ごさなければならなくなったこの休み。ハッキリ言って、11日のお昼までは気持ちがどよ〜んとしていた。
 しかし、これではいけない!と思った私。立ち直りも能動的にしたい私は、やっと自由になった数時間を散歩に使うことにした。
 ホントに良い天気。まさにレジャー日和とも言えるこんな日。でも数時間しか使えないのなら、近所の散歩がいちばんいい。お金も時間もそれほど使わずに楽しめる。そして、何にも考えないで歩き始めた目的地は江古田だった。
 江古田というのは、家からとても近い。歩いて20分もかからないところだけれど、なかなか歩いて行くことがなかった。西武池袋線の江古田は、日大芸術学部と武蔵野音大、武蔵大学がある学生の街である。以前、私もここではよく遊んだ。古びた中華屋さんで、夜のご飯を友達と食べて帰ることもかなりあった。しかし、もうずっと行っていない。こんなに近いのに、下車することもほとんどなくなったし、ましてや歩いて行くこともなかった。
 金木犀の香りに誘われるように歩き出した私は、大きな通りから小径に入り、公園を抜けて江古田の商店街に着いた。あ〜、なんかなつかしいなあ・・・。昔ながらの小さなお店がいっぱいあって、ワクワクした。すると、見たことのない店があった。ベトナム雑貨の店である。雑貨大好きの私は、もちろん店に入った。お店の中もベトナミア〜ンっていう感じで、お香の匂いが漂っている。アオザイのセクシーなドレスや、ベルベットの靴や、織物のバッグや、ベトナム食器がとても良い感じで並べてある。ふと、目に留まったのはバニティバッグだった。値段もたったの1200円!この値段で、またまた私の安い物大好きパワーがスイッチオンした。えんじ色と緑色と紺色と白の糸で織られている生地で作ってあるバニティに、目が釘付けになってしまった。先日買ったばかりのカメラを入れて持ち歩くのにいいなあと思った。そうすると、なんだか無骨な感じがしなくていいな。
 そう考えながら見ていると、お店の女性に声をかけられた。「素敵な色ですよね。ちょっとしたものを入れて持つのにいいですよねぇ」って。すかさず私は「カメラを入れたら面白いかなって思ったんです」と答えた。お店の女性は、「うわっ、いい考えですねぇ!ひょっとしてカメラマンさんですか?」と言った。私は「いいえ、違います。写真が好きなんです」って答えながら、(なんでそう見えるのかなあ??)と、とても不思議だった。確かに今日の出で立ちがボーダーシャツに黒のパンツで、私自身がとっても無骨な感じだったのだろうか?
 そして結局、そのバニティを買って、また歩き出した。すると今度は懐かしいお店にいっぱい遭遇した。安い八百屋さんや、ジャズ喫茶の走りのような喫茶店、何でも安いスーパー。あの中華屋さんはあるかな???「あった!あった!!」そうそう、「長寿軒」っていう名前だった!でもびっくりしたのは、店がすご〜くきれいになっていたことだった。その昔は、なんか小さくて、はっきり言ってボロボロの雰囲気だったのに。今はこぎれいな中華料理店という感じに昇格していた。おじさんは元気かなあ?
 それから、「まほうつかいのでし」という不思議なパスタ屋さんも、まだ健在だったことを知って、なんだか安心した。
 こうして江古田商店街の旅をして、気分が晴れたとっても安上がりな私であった。