1999.2.16

変身コーナー

 物を見て歩く、「建物探訪」を見る・・・この2つについて立て続けに書いていたら、また更に思い出したことがある。
 それは、テレビでよくやっていた「奥様変身コーナー」だった。いったいどこの局でやっていたのか全く覚えていないのだが、朝か午後のテレビ番組の恒例のコーナーであった。私が小学生のころ、遥か遠い昔の記憶である。
 朝か午後にやっていたということは、風邪を引いて学校を休んだときや夏休みとか、そんな時しか見ることはできなかったと思う。でもなぜかそのコーナーは、私の中の何かを妙にくすぐり、影響を与えた。
 もともと変身もののアニメは大好きだったけれど、かといって超ファンタジーの世界には殆ど興味がない子どもだった私は、現実でホントにありえそうな「変身」というのがかなり好きだった。○○ちゃんが魔法を使えるっていう話は、結構リアルに感じられることだったので、私の中では「あり」だった。なのに、ディズニーのような世界は私の中では「なし」だったのである。なんだかわけのわからない話だけれど。
 そんな私の何かをくすぐった「奥様変身コーナー」は、これはまるで実在する魔法使いが仕切っているような世界なのであった。
 まずひとりの奥様が登場する。その奥様は子どもの目から見てもちょっと野暮ったくて、どの角度から見ても垢抜けないような女性である。今、思い出すと、髪の毛はパーマのとれかかったセミロング、小柄でちょっとぽっちゃり、スカートはふくらはぎのちょうど真ん中ぐらいの長さで、着こなしの難易度最高というような服装の奥様が多かったような印象がある。もちろん、ふくらはぎの真ん中ぐらいの丈のスカートの着こなし難易度がとても高いことは、大人になってからわかったことだけど、それでも子どもの目から見ても(う〜む。なにかが違う・・・)という感想が素直に出てしまうような着こなしの奥様が選抜されていたようだ。
 奥様を変身させるために登場する魔法使いたちは、頭にターバンを巻いて大きなサングラスをしているデザイナーかスタイリストの女性、ヘアメイクは細身の男性、そしてもう一人誰かがいたような気がするのだが、その3名で奥様を変身させるべく番組中に奮闘するのであった。番組の最初に今日の奥様を紹介し、最後に変身後を見せるという方法だったと思う。子どもだった私には、真ん中の話は全く興味のない番組だったから、とにかく最初と最後だけをどうにかして見た記憶がある。
 奥様はまずどのように変身したいかをインタビューされる。それから、今日の変身のポイントをヘアメイクの方が説明する。そしてデザイナーの女性が今日の変身服を選ぶ。変身服は「うわ〜!着てみたい」っていうのもあるし、「うーん、それねえ」っていうのもあるし、それはもう好き好きだから仕方あるまい。
 変身服を持って、奥様と魔法使いたちは別室に消えていく。もうそのときの私の気持ちは「ウキウキ!ドキドキ!」なのだ。こんな子どもって可愛くないだろうか?
 そしていよいよ奥様が登場する。私のドキドキは最高潮!
 奥様は髪の毛をすっきりカットされ、とてもきれいにお化粧を施され、変身服に着替えている。靴もバッグも頭のてっぺんから爪先まで何から何まで変わった。ご主人が登場する場合もある。「びっくりしました・・・」って、なんだか恥ずかしそう。奥様はきれいになって気持ちが高揚しているせいか、自信がついてキラキラして見える。そんな画面を見ると、なんだかやけに嬉しくなってしまい、いっしょになってニヤニヤしているおやじのような子どもの私がいた。
 変身って、な〜んて楽しいんだろう!