「イケミツ・アニエス」さようなら! 〜その2〜
私が以前から考えていたことは、たった一つだけあった。それは、ず〜っと私がお世話になっているハルカさんが「アニエスベー・サンライズ」という会社を辞めてしまう日は、いつかやって来るということだった。
8月16日にイケミツ・アニエスが閉店すると教えてくれたハルカさんは、それと共に退社してしまうことも教えてくれた。彼女はイケミツ・アニエスを愛してやまない人だったけれど、辞めることを決意した経緯を丁寧に語ってくれた。想像していたことがこんなに早く起こってしまったことに、コメントができなかった。いつか・・・・。そう、数年後には起こるだろうと予感していたことが、こんなに早く現実になってしまう。
アニエス・ベーがなくなるわけではないのに、こんなに落ち込むのは、イケミツ・アニエスに対する私の依存度が高かったからだろう。
その後すぐにパリに行き、当然、アニエスにも行った。パリのSHOPはそれなりに人の出入りはあるけれど、ごちゃごちゃしていなくて、ゆっくり見ることができる。しかもスタッフもとってもラフで、大きな作業テーブルにちょこんと腰掛けていたりして「勝手に見ていってね。試着もどうぞ」って感じでこちらも気が楽だ。しかもパリのSHOPでは一つの大きな試着室でみ〜んなで着替えるので、まるで舞台の楽屋のような感じで、パリジェンヌと共に着替えをしたりする。こういう雰囲気は、他の一流ブランドのパリ本店で味わうことは皆無である。そういう店では、すっくと立ったスタッフが「見てもいいわよ。でもね、商品には触らないで」って感じで監視が厳しそうだ。
そこで私が思ったのは、そういうアニエスのような店の良さは「客が作らなければいけない」ということだった。試着のときもかなり丁寧に商品を扱う、本当に気に入ったら「潔く」購入する、大切にしそうもなければやはり「潔く」購入しない。そういう毅然とした態度でなければ、確かにお店の人からイヤな顔をされてしまうだろう。一流ブランドのスタッフが高飛車に見えるのは、私達日本人の態度にも大いに問題ありだからだろう。
日本に帰ってきて、私は「アニエスベー・サンライズ」に手紙を書くことにした。イケミツ・アニエスがなくなるのはとても悲しいけれど、それ以上に私の得たものは大きかったのだ。とにかくその気持ちを素直に伝えたかった。ただの客の自分がそんなことをするのはおこがましいかもしれないけれど、感謝の気持ちというのはできるだけ素直に伝えたほうがいいと思った。たった少しのそれだけのことが、アニエスの良さを支えるかもしれないと勝手に思いこんだ。
8月16日、イケミツ・アニエス閉店の日。もう明日から見ることのできない窓ガラスのロゴマークを、カメラで撮った。
「イケミツ・アニエスありがとう!」の気持ちはどんなに時間が経っても変わらないし、これからも私はずっとアニエスを着続ける。感謝と誇りを持ちながら・・・・・・。
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