細胞小器官であるperoxisomeが先天的に欠損するZellweger症候群(ZS)は、脳、肝、腎に異常をきたす奇形症候群であり、peroxisomal diseaseのなかでも最も重症な病型である。特に、中枢神経系では神経細胞の遊走障害などの構築異常が高率に認められている。peroxisomeが欠損するため様々な生化学的異常が生じるが、これらがどのように病態と関わっているかは未だ解明されていない。 私たちはperoxisome欠損CHO変異細胞を用いて、糖脂質が変異細胞で著増することを見出し、さらにZS患者由来繊維芽細胞でも同様に糖脂質代謝変化があることを確認した。糖脂質は細胞の分化や増殖に重要な役割をはたしており、ZSの病態にも糖脂質が関与しているのではないかという仮説のもとに現在研究をすすめている。
2.Werdnig-Hoffmann病の遺伝子解析
脊髄前角細胞の脱落によって進行性に筋萎縮を進行性に生じるWerdnig-Hoffmann病(WH病)の原因遺伝子は1995年に第5染色体にあるSMN遺伝子であることが明らかにされた。98%以上の症例でSMN遺伝子のexon7, 8の欠失が報告されている。私たちは日本人の症例でマイクロサテライトマーカー解析を行い、exon7, 8を含む広い範囲に欠失を持つ頻度が比較的高いことを見出した。同じWH病の症例でも重症度は症例ごとにかなりの幅を示すことから、重症度を規定する他の要因について現在検討中である。