エリック・ロメールは、フランスの映画監督である。
 1920年3月21日生まれの彼は、今年で79歳。彼の創る作品はそのどれもが瑞々しい感性に溢れている。
 私がはじめて観たロメール作品は「パリのランデブー」('94)なのだが、楽しくて楽しくて、一度で虜になってしまった。
 彼の映画の特徴は、普通の人たちの日常にスポットを当てて、登場人物のひとりひとりを背景から鮮やかにすうっと浮き出るように自然に描いていることである。その舞台はパリであったり、フランスの田舎であったり、しかしどこもフランスらしいところばかりである。
 パリの街中での撮影も、ごく日常に人々が活動している場所で、普通の人々の動きをロケのために阻止することなどなく撮影を進めている。だからとてもリアルである。
 しかし、それだけなら、そういうタイプの映画はフランスには山とある。
 文学部出身の彼は、原作も全て自分で書いている。その作品はどれも「会話」が主体で演劇にしてもいいようなそれは非常に魅力的である。人々の話し言葉が生きている。
 恋愛の話が殆どだけれども、それもラブ・ロマンスなんていう格好のいいものではない。おそらくアメリカ映画の恋愛ものには全く存在しないパターンだと思う。
 二枚目の役者が力の限り美女を救う・・・、な〜んていうディカプリオものとは全く縁遠い話なのだ。誰が見てもかっこいい役者なんてまるで皆無。結末も情けないものが多かったりするけれど、それがとっても気持ちがよくて後味もいい(そう思うのは私だから?)。実際の恋愛だって、そりゃあうまくいきたいけれど、ひと筋縄でいかないから醍醐味があるのだし、映画の中だったらなおのことだろう。ものすごくドラマチックな話だったら現実離れしていて、照れくさくて気持ちが悪かったりしちゃうし・・・。ロメールの世界はそのへんのさじ加減が実に見事なのである。とにかくハリウッド映画のラブ・ロマンスにはほとんどあり得ないような話なのである。
 私は完全にロメールに引き込まれている。

'59 獅子座
'62 モンソーのパン屋の女の子

'63 シュザンヌの生き方
'64 パリところどころ
'66 コレクションする女
'69 モード家の一夜
'70 クレールの膝

'72 愛の昼下がり
'75 O侯爵夫人
'78 聖杯伝説
'80 飛行士の妻 
'82 美しき結婚
'83 海辺のポーリーヌ
'
84 満月の夜
'85 緑の光線
'86 レネットとミラベル
   四つの冒険
'86 友達の恋人
'89 春のソナタ
'91 冬物語 
'92 木と市長と文化会館/
   または7つの偶然
'94 パリのランデブー 
'96 夏物語
'98 恋の秋



*ピンク色のタイトルについては観ているので、ひとつひとつご紹介したいと思っています。
残るはあと少しなのですが・・。